
1978年、世界で初めて体外受精-胚移植による妊娠・分娩に成功して以来、それに関連した高度な医療技術は急速な進歩を遂げてきました。 この体外で卵子や受精卵(胚)を操作する生殖医療技術を高度生殖医療 (Assisted Reproduction Technology:ART)と呼んでいます。
ARTを行う基準は大きく分けて5つあります。
| 癒着などが原因で卵管がつまっていると、精子と卵が出会うことができません。 | |
| 精子の数が少ない人や、運動率の悪い人、奇形率の高い人は場合によってARTが必要となります。 | |
| 全ての人にARTが適応という訳ではありません。 | |
| 精子に対する抗体が体の中にできてしまうと、受精を妨げる原因になります。 | |
| 一般不妊治療(AIHなど)を多周期施行しても妊娠に至らない場合。半分近くが原因不明だと言われています。 |
それぞれの患者様に合わせ調節卵巣刺激を行っていきます。
若年者や卵巣機能が十分高い方はロング法、卵巣機能がやや低下している方はアンタゴニスト法を行っています。
また、排卵誘発剤を使わない自然周期での採卵も行っています。


排卵誘発剤を用いると、直径2cm弱の卵胞(卵子が入っている袋)がいくつかできます。
その卵胞に針を刺して吸引し、卵子を取り出すのが採卵です。
当院では、静脈麻酔下で採卵を行っているので、処置中の痛みはありません。
また、採卵に用いる針も、他の施設と比べて細いものを使用しているので、処置後の痛みも少ないです。

・・・採卵時間は10分程度です。
回復室で2〜3時間休んでいただきます。
・・・採卵個数や精子の状態と受精方法の説明があります。
受精の方法には、コンベンショナル法(媒精法)と顕微授精法の2種類があります。
元気に動いている精子がたくさんいればコンベンショナル法、
あまりいなければ顕微授精法で受精していきます。
コンベンショナル法(媒精法)とは精子と卵子を同じ培養液中で培養し、受精を行わせる方法です。
十分量の精子が必要で、調整した後の良好運動精子数が100万以上だった場合に行います。
当院ではswim up down法によって運動性の高い精子を集め、そのあと卵子1個につき精子10万匹をふりかけます。

精液検査による検査結果で精子が少なかった場合や、受精障害があると診断された場合、さらに無精子症で精巣精子を使用する場合(TESE-ICSI)に顕微授精を行います。
当院ではピエゾ法によって精子を卵へ注入します。
この方法を使って受精することにより、卵へのダメージが大幅に軽減されます。

従来法
通常のICSI法では鋭い針を卵に強く押し付けて穴を開けます。
そのため、卵へのダメージが大きくなります。

ピエゾ法
ピエゾ法では細かい振動を針に与えることで卵に穴を開けます。 そのため、卵に強い力を加えなくても簡単に穴が開きます。
精液中に精子が見当たらない場合などに、外科的に精巣から精子を回収して(TESE)顕微授精に利用することができます。
当院では、無精子症の原因をホルモン検査により閉塞性か非閉塞性かを判断し、閉塞性の場合は当クリニックにて簡易TESE手術を行います。 非閉塞性の場合は、精巣の中でもより精子がありそうな箇所を顕微鏡で詳しく見ながら行うため(MD-TESEといいます)、 専門の機器を配備する大阪大学にて行っています。 どちらも当クリニックで男性不妊外来を担当している先生方が執刀します。 簡易TESEは局部麻酔で行うため日帰りになりますが、MD-TESEの場合は全身麻酔を行ないますので2〜3日程の入院が必要になります。
採取した組織は顕微鏡下で精子の有無を確認したあと、数回分に分けて凍結保存します。
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IMSIとは超高倍率で精子の形態を観察し、精子を選択して顕微授精を行う新技術です。 従来の顕微授精(ICSI)では、精子を400倍に拡大し運動性と頭部の形態を観察し選択していました。
しかし、400倍では微細な精子の構造は良く分かりません。 精子頭部に形態異常のある精子を用いての顕微授精では妊娠率の低下や、流産率が高くなるという報告があり、できるだけ形態の正常な精子を選別することが重要であるといわれています。 IMSIは10000倍まで拡大することができます。
つまり、IMSIをおこなうことで、運動性に加え、精子頭部の小さな空胞を見つけることまで可能であり、 形のよいとされていた精子の中からより優れた精子を特定し顕微授精をおこなうことができるのです。

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当院では、卵子の紡錘体の位置を確認できる機器「OosightTM Imaging System」を導入しています。
紡錘体は、染色体の分裂や核の分裂に重要な役割を果たしています。 つまり、紡錘体に傷がつくと受精卵に悪い影響を与えかねません。 一般的に紡錘体は第一極体のそばにあると考えられていましたが、実際には第一極体より約30度以上離れているものが卵子の約30%もあることがわかってきました。 卵子の内部構造を確認し、顕微授精をおこなうことで、受精の際の安全性を高めることができ妊娠率の上昇へとつながるのです。

培養は当院内にあるクリーンルームという清潔な培養室で培養士が行います。
受精すると、胚は下の写真の様に成長していきます。

受精してから2日目で4分割、3日目で8分割、5日目で胚盤胞になっているのが理想的ですが、すべての胚がこのような経過をたどるわけではありません。 途中で成長が止まってしまう胚もあります。 移植ではなるべく理想に近い成長を遂げた胚を選択します。 また、成長が少し遅い胚でも、子宮に戻すと改善されることもあります。
近年開発されたガラス化凍結法によりほとんどの胚がダメージなく元の状態に戻るようになりました。 ガラス化凍結法では、耐凍剤を含んだ保存液に胚を浸したあと、スティックの表面に乗せて液体窒素内に保存します。 発育が正常な良好胚は、一度凍結すると半永久的に保存が可能です。
■胚凍結をする利点
・子宮内の環境が整った周期を選んで戻せるので、着床率が高くなります。
・卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を予防できます。
そのため当院では、OHSSが起こる可能性が高い場合はもちろん、卵巣に刺激を与えた採卵周期は移植を行わず、ほとんどの方が全胚凍結しています。

グレードの良い胚を選んで、アシステッドハッチングした後、その胚を細くて柔らかい管の中に入れ、子宮内へ注入します。 移植時間は5〜10分程度で、ARTでは受精胚の複数個移植により多胎妊娠率が高いことから、2008年に日本産婦人科学会生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解が発表され、単一胚移植が推進されています。 当院では、きちんと成長してきた胚盤胞の単一胚移植を行うようにしています。
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体外受精や顕微授精でできた胚(受精卵)を凍結保存しておき、採卵した周期とは別な周期に融解して子宮内に移植する方法です。 内膜がきちんと成長した周期に移植ができるため、着床率も高くなります。 凍結胚移植で妊娠・分娩した児の身体発育や精神発育は、自然妊娠児との間に差はないと報告されています。
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採卵周期に移植を行います。 OHSSが重度になる危険性が低く、内膜の状態も良い場合に、採卵後3〜5日目に移植を行います。
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子宮内胚移植を行っても妊娠に至らなかった場合に、初期胚の生育場所である卵管内へ移植する方法です。 子宮鏡下と腹腔鏡下がありますが、最近では主には浸襲性が小さい子宮鏡下で行っています。

移植日の約2日前に患者さんの血液中よりリンパ球を分離し、子宮内に注入します。
子宮内で着床因子が誘導され、胚が着床しやすい環境が作られます。
SEET法(Stimulation of Endometrium-Embryo Transfer:SEET)
リンパ球注入と同じように、移植日の2、3日前に、培養液を子宮内に注入することにより、子宮内膜が刺激を受け、胚が着床しやすい環境が作られます。 注入する培養液は、胚盤胞まで成長した培養液になります。
アシステッドハッチング(AHA)
胚は透明帯というたんぱく質の膜に守られています アシステッドハッチングとは胚が透明帯から脱出するのを補助するために、透明帯の一部を薄く切開する技術です。 凍結融解胚は透明帯が硬化しているので特に必要になります。 当院ではレーザー法(透明帯部分にレーザーを照射して溶かす方法)によりAHAを行っています。 従来行われていた機械的方法や科学的方法に比べて、操作が簡単で、時間もかからないため、胚へのダメージが少なくて済みます。

黄体ホルモンとは子宮の内膜を厚くさせるホルモンです。
子宮内膜というのはいわゆる‘赤ちゃんのお布団’と呼ばれるものでこれが厚くなるほど妊娠しやすい、また流産しにくい条件となっていくのです。
ここでは黄体ホルモンの分泌を促したりする薬や、黄体ホルモン自体を体の中に投与していきます。
黄体管理は採卵を行った2日目から2〜3日おきごとに注射や膣座薬を使用して行われていきます。
採卵から2週間後に妊娠判定を行いますが、妊娠が成立した場合、その後も2週間ほど続けられていきます。
融解胚移植を行う周期の種類によって、黄体管理のスケジュールがかわってきます。
自然周期とHRCI周期のどちらかで、内膜を発育させていきます。
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経膣超音波下で内膜の発育具合を見ながらちょうどよい日に受精卵(胚)を移植していく方法です。 月経周期が順調な方に行われます。 内膜発育の促進に、少量のhMG剤やセキソビットなどの排卵誘発剤を併用する事もあります。 移植後は、数日に1回hCGや黄体ホルモンの投与を行います。
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エストラーナという貼り薬をお腹に貼ることで皮膚からホルモンを補充させ、内膜を厚くしていきます。 そしてちょうどよい日に受精卵(胚)を移植していく方法です。自然ではあまり内膜が厚くならない方に行われます。 張り薬(エストラーナ)と黄体ホルモン(膣座薬か注射)を投与していきます。 貼り薬は2日に1回、黄体ホルモンは連日投与となります。 妊娠が成立した場合、上記のホルモン補充は妊娠9〜10週位まで継続します。
